| 
 
 (あらすじ)
  
   半夏生
  
           
          南城めぐみ
  
 山内晴輝は、中学一年生。思春期特有の体の変化に悩み、親か 
ら距離を置く、反抗期になるという、精神的にも不安定な時期にさ 
らされ「自分」というものを見つめなおす。 
 また、学校では、明るくひょうきんなAに、命令されたり、いや 
なことを言われたりするようになる。関わりたくないと思うに、 
一緒につるんではへらへらと笑い、本当は泣きたいのに泣けない自 
分がいやだった。 
 六月二十三日慰霊の日は、とうさんの三歳上の太郎伯父さん家族 
と同居している祖母も一緒に、糸満市摩文仁の平和記念公園に行き、 
その後、みんなで昼食を取るのが恒例だ。 
 祖母は、自分の両親、叔父二人を戦争で亡くしている。五歳の時 
の戦争体験を聞くにつれ、命と平和の大切さを思うのであった。 
 祖母は、家族を失い、孤児になり、苦難の道を乗り越えてきた。 
そして、自分の子や孫に二度と悲しい思いをさせないように、平和 
の願いを込めて、毎年平和記念公園や平和の礎を参拝している。 
 晴輝はそんな祖母の人生に、自分の人生を重なり合わせ、雑草 
のように強く生きなさいという祖母の言葉に励まされるのであった。 
 その夜、かあさんと姉優子の衝突のとばっちりを受け、晴輝はか 
あさんの何気ない言葉に、「うるさいんだよ!本当のかあさんじゃな 
いくせに」と言ってしまう。それを聞いていたとうさんは、「その言 
い方は何だ」と、晴輝を車に乗せ、外に連れ出す。 
 とうさんが淡々と語る、かあさんとの結婚までのいきさつ、優子 
の出生の秘密、特別養子縁組で育てた晴輝への思い、初めて聞くこ 
とに目を丸くし、深く自分を反省するのであった。それは、とうさ 
んを見直す時でもあった。 
 半夏生の頃、梅雨が明けて、本格的な夏がこれからやってくるよ 
うに、山内家にも、晴輝の心にも、新しい季節がやってくるのだった。 
  |