著者:末吉節子

ISBN978-4-286-24301-6 C0093
¥1100E

文芸社


あらすじ

父親のない子、といじめられえた西田洋が、
その境遇を乗り超えてプロ野球選手になる物語だ。

舞台は沖縄本島北部にある離島で、
島の自然や人物の描写がよくて、懐かしみが浮かぶ。
いじめっ子たちの言葉、
「お前の母ちゃんは、中学生を誑(たぶら)かして、
お前を生んだってね」
に衝撃を受け、洋は母に問い質すが、母は答えない。
 真実を話す苦しみを負う母は、ある日、
今日こそは、話してあげよう、
と洋を誘って島で一番高い山に登るのだが、
太平洋に向かって母の口から出たのは、

「洋、あなたは、この太平洋のように世界に
羽ばたける人間になれると思う! 名前が洋だから」
だった。

やがて、洋が28歳になり、
母は洋に真実を打ち明ける。

「15歳の肉体的な騒ぎに、38歳の、女の魔性の火が燃えたのだと思う」

辛うじて告白する。
そして、歪曲されて漏れた事実を突き通すために
洋に長い手紙を残す。

圧巻は、最終章で、洋が、かつての中学生、
正夫にその手紙を読ませるところである。


帯より

ぼくにはどうしてお父さんがいないの?

「父親の無い子」といじめられながらも、
プロ野球選手になった(よう)

プロ野球入団を報告するため、
故郷沖縄の伊是名島に戻った彼は、

亡き母親の思い出を
正面から受け止める……


墓参りなどに行ったとき、蝶が墓の周りの木から
飛んで来て、重箱のご馳走の上に止まったりする
のを見たことがありますか?
蝶のあの行動は、あの世の人、つまり、
祖先の伝言を生きている人に
伝えようとしているものらしい。

先祖の伝言はたいがいの場合、子孫に対して
自分たちを大切にしてくれることへの感謝の意
だそうだが、中には、子孫が曲がった方向に
進もうとしているのを止めようと、一生懸命
ご馳走の上を飛び回ったりする場合もあるらしい。
(本文より)

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2023年10月1日(土曜日)琉球新報紙



2023年11月4日(土曜日)読書



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